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「凛々ちゃん、焼きそば出来たよ」
「凛々、麦茶補充」
「凛々、氷がねぇ」
「凛々ちゃん、デートしよ」
最後のお前、それ仕事じゃ無いからな。
ハーフパンツと短パンで、海の家の中を右往左往する私。
あのイケメン連中、人使い荒いんだって。
マジでありえない。
下っぱの私は言うなりに働いてるが、そろそろ切れそうだ。
こんな所、もう止めてやる!
首に巻いたタオルで滲んだ額の汗を拭いながら決意する。
イケメンがなんぼのもんじゃい!
傷心で来たはずの私の心は、すっかり別のものと入れ替わっていた。
「凛々ちゃん、今日はご苦労様」
海の家の下宿先に戻った私に、店長が缶ビールを差し出した。
「私、未成年だから」
ともちろん断る。
「優等生かよ」
と悪態をついたのは楽。
「酔っぱらうと可愛くなるのかな」
と色っぽくウインクするのは恋紀。
私にまで色気を振り撒くな。
「高校生かぁ、可愛いな」
と笑ったのは咲。
仕事中は後ろで一つにくくってる長い髪は、今はサラサラと彼の両側で揺れてる。
しかし、長いな。
「失恋なんて飲んで忘れりゃ良いのに」
と缶ビールをグイッと飲んだのは凪。
「う、煩い」
居心地の悪さにそっぽを向いた。
うちのバカ兄貴は丁寧に失恋した事を店長に伝えたらしい。
そして、このバカ店長はご丁寧にみんなに話したらしい。
どこ言ったデリカシー。
そして、プライベートを返せ。
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