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海の家まで連れられて来られた。
森本輝紀は腰に手を当てて満足そうに笑いながら私達を店先で待ち構えていた。
「よし、良くやったな。皇(コウ)」
私を捕まえた奴は皇って言うらしい。
ニマニマ笑う目の前の男を蹴り飛ばして良いだろうか。
森本輝紀を見て思う。
「なぁ、店長、特別ボーナスってなんだよ」
皇が興味津々だ。
「う~ん、そうだな。今日の夕飯を奢ってやる」
「マジで?ラッキー」
と喜ぶ彼は筋肉バカだと認定した。
「それにしても、凛々ちゃん凄いね。あのジャンプ力と走り。俺、惚れそうになった」
森本輝紀が私を見た。
そりゃそうでしょ、六月までは陸上部でハードルやってたんだから。
それそこ、必死に陸上に命かけてた。
そのおかげで、彼氏を乗っ取られたけど。
あ~またヤな事思い出した。
「陸上やってたから」
とだけ返す。
「えっ?惚れそうは放置?」
と聞かれ、
「・・・」
こいつ、アホだと認定する。
「さぁ、店長は置いといて仕事に戻ろ」
あ、貴方もスルーの方向なのですね。
赤髪に親近感が少し沸いた。
「ああ、そうするか」
楽と呼ばれた彼が店内へと歩いていく。
森本輝紀以外はぞろぞろと持ち場へと帰ってく。
私は逃げるなら今がチャンスか?と考える。
「凛々ちゃん、逃げるのは止めようか」
アホだけど頭は切れるらしい。
「別に」
「だから、それ古いから」
「なんの事よ?さっきから」
「えっ?凛々ちゃん知らないの?」
「だから何が?」
ウザい・・・限り無くウザい。
「うわぁ~某女優の発言を知らないとかジェネレーションギャップだわ」
酷く落ち込んだ森本輝紀。
この人、本気でヤバいかも。
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