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「君はパトロール中にこの大金を拾ったんだよね?」
「そうですけど……」
「だったら、君に謝礼を受け取る事は出来ない」
…………。
は?
はぁ!?
「な、なんで!?」
「公務中に拾った物に、遺失物法は該当しないんだ」
ちょ……。
なんだよ、それ……。
じゃあ、俺は百万円を貰えないって事なのか?
それはあんまりじゃないか!
あまりに理不尽だ!
だったら……。
「じゃあ、辞めます!」
「え?」
「警察官なんか、もうやめてやるからお金下さい!」
俺は、気が動転してそんな事を口走っていた。
「ちょっと、落ち着かないか
たかが百万円ごときで、職を手放す奴があるか!
」
上司の言う事は尤もだ。
俺は直ぐに気を取り戻した。
「そ、そうですよね……
ははは……」
笑ってごまかす俺。
「全く……、恥を知れ」
「はい、すみません……」
怒られちゃったよ。
「と、言う訳なのでこの大金は全額お持ち帰り下さい
お車をお出ししましょう」
上司はそう言って、老婆に落とし物を返却した。
「本当に謝礼はよろしいんでしょうか?」
老婆は、申し訳なさそうに確認してきたが。
「あ、全然大丈夫です
見苦しいところを見せてしまってすみません」
俺は、作り笑いであしらった。
「そうですか
では、私はこれで……」
俺の言葉を聞いて、老婆は上司に連れられ立ち去った。
はぁ……。
百万円……。
惜しかったなぁ……。
俺が凹んでいた時。
「あの」
老婆が、最後に話しかけてきた。
「はい?」
「この度は、本当にありがとうございました
このお金は、命と同等に大事な物だったのです
あなたに拾って頂き、本当に良かったと思ってます」
老婆は俺に向けて、深々と頭を下げた。
ふん……。
「いえ、本官は当然の事をしただけであります!」
俺は、敬礼をして老婆を見送った。
まぁ、あれだ……。
肩書きが正義の仕事なんて、案外理不尽で大変な事が多いのかも知れない。
それでも……。
感謝されるって事は良いものだ。
なかなか、この仕事も悪くない。
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