前話 ~森を尋ねて~

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しかし、この世界のすべての人間が例外無く平等に幸せになると言う状況をなんの疑問も持たずに皆が生きていると言うのは俺の目から見て仕舞えば、心底不気味に映るのだ。 こんな思想の自分を特別だとは思わない。 俺は絶対的な異端者である。 だから別に世界を変えていこうとも思わない。 そもそも、15歳の男子高校生、ましては俺みたいな奴が世界を変えようとする必要は無いのだから。 ◇ いつもの通学路。騒音を撒き散らすことが無くなった電気自動車が通る駅前の大通りをいつも通りに歩く。 季節は夏のど真ん中、本来は炎天直下の筈だ。しかし、気温すら完璧に管理されたこの世界では、適温が街を支配していた。 今や、季節の気温を感じたければ、「気風制御装置」の効果範囲でない。自然公園などを訪れるしか無い。 地球から、真の意味での自然は消え去り。人工的な緑が、二酸化炭素を酸素に変換し続けている。 この状況が当たり前だと人々は思っているが、俺は違和感を感じてしまう。まるで自分が夢の中にいるのでは無いか。ある日目をさましたら、病院のベットの上で、そこに本来の世界が存在しているのでは無いのか。そんな不可思議な妄想を頭の中で繰り広げてしまうのだ。 その感情を押し殺し、今日も俺は一人の安穏な市民として振舞っていく。 この完成国家では、多数決が大きな力を持つ。この俺の思想をイタズラに振りまいて、奇異の目を向けられるのはどうしても避けたいことであった。 そこで不意に昨夜の夕飯がとても美味しかった事を思い出した。 息子が異常な人間であると愛する両親に要らぬ苦労をかけたく無いので、俺自身のこの異常思想は大事にしまってあるのだ。 不要な思案に耽りながら歩いていると 突然背中に正体不明の衝撃が走った。
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