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カンカンと音を鳴らして、いたるところにサビの付いた階段を上る。
上ってすぐの、その隣。
古びた二階建てアパートの405号室。
ここが私の居ていい場所。
郵便受けには手紙が3枚。
多分何かの請求書。
傘の水を切って、手紙を小脇に挟む。
扉を開け、靴箱に傘をかける。
目の前には暗い廊下。
電気のスイッチだけが僅かに光っている。
濡れた靴を脱ぎ捨て、居間へ向かう。
ただいま。とは言わなくなった。
どうせ返事は返ってこない。
入り口横のスイッチをつけると、お世辞にも綺麗とは言えない部屋が見える。
(あ、朝ごはんのゴミそのままじゃん。)
もっとシャレた空間になる筈だった居間は、生活感に埋もれていた。
そこらにあったレジ袋にゴミを詰めて、ひとまずテーブルの横に置く。
いつもは、帰ってすぐにシャワーを浴びるのだが今日はそんな気分じゃない。
顔を洗い、服を着替えて台所へ向かう。
冷蔵庫から、缶ビールとツマミのベーコン、卵を出してテーブルに置き、冷凍しておいたご飯をレンジに入れて4分。
テーブルに向かい、缶ビールを手に取って座椅子にどっかり腰掛ける。
プシュッ
1日の終わりの音が鳴る。
これが本当に幸せだ。
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