天井の隅に蜘蛛の巣

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『 心のノート』 このノートは過去の心理を知れるノートです。 未来の心理は知れません。 使用方法は簡単です。 心理を知りたい場面を、強く思い浮かべながら対象者の名前を書いてください。 このノートがあなたの糧となることを祈っております。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 居間に戻り、早速開いた1ページ目にはこう書かれていた。 ゴクリ、とビールを1口。 「にしても、心が読めるノートか・・・」 先程までの恐怖はどこかへ行き、今は好奇心の方が湧き出していた。 (でも、ほんとにわかるのか?) 当然の疑問である。 だが、何故か心の奥で否定しきれない自分がいた。 「ま、書いてみるか」 なんにせよ、書いてみればわかることだ。 テーブルの端に投げられていたボールペンを手に取り、ノートに軽く置く。 (誰にしようか?) しばし迷ったが、まずは自分の名前を書いてみることにした。 印象に残っていてわかりやすいのは、丁度このノートが届いた時である。 (10分前ぐらいだから、12時10分か) 説明を見ながら書き終えた。 (・・・・・・・・・) ノートを見つめる。 (・・・?) 気のせいか、徐々にノートの余白に字が浮かんできた。 『 誰か来たのか?』『 もしかしてイタズラ?』『 強盗とかだったらどうしよ う・・・』『 てか、ズボン履いてないや』 『 誰かいるかな?』『 いない。隠れてたりとか?』『 心のノート?』『 なにこれ怖いな』 「けっこう出てくるのな!」 でも、これで確信が持てた。 ここに書かれているのは確かに自分が思っていたことばかりだ。 つまり、このノートは本当に人の心がわかる。 「これ、すごいじゃん」 思わず、笑みが浮かんだ。 (次は何を書こう!) 少し高揚しながら今日1日を思い返して見る。 (あー、そういえば) 真っ先に浮かんできたのは夕方のこと。 自分のミスではないのだが、勘違いをした上司に長々と説教されたのだ。 後に同僚のミスだったことがわかり、そいつには謝罪されたのだが、どうにも腑に落ちなかった。 その同僚とは、ここ数ヶ月の付き合いなのだが、どこかずるい所がある。 「よし、あいつに決めた」 再びボールペンを持ち、ノートに名前とその時の時間を書く。 すると、しばらくして字が浮かび上がってきた。
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