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『 ラッキー』『 あのバカ勘違いしてくれてよかったー』『 ま、こいつなら軽く謝っとけばいいでしょ』『 お腹空いたなぁ』『 焼肉食べたいなぁ』『 あ、まだあの仕事残ってた』・・・・・・・・・
1ページの約半分を埋め尽くすように文字が浮かび上がる。
先程までの高陽感が嘘のように引けていく。
(あー)
「やっぱ、そうだよね。」
所詮人なんてこんなもん。
わかってはいたけど。
予想はしてたけど。
いざ、この目で見ると心に重しが乗ったようになる。
(あー、なんでこいつの名前書いちゃったんだろ)
後悔を感じながら、またビールを1口。
今頃、同僚は焼き肉を詰め込んだ腹でゆったり寝入っているのだろう。
怒りとも、悲しみともつかない。
虚しさが心に広がる。
(はぁ、気にしてもしょうがないか)
広がった虚しさを消すように、ビールを流し込む。
(あ、なくなった)
しぶしぶながら、座椅子から立ち上がり新しいビールを取りに冷蔵庫へ向かう。
ビールを取り出しテーブルへ戻る途中、ふと思う。
(あ、なんならついでにあの上司の名前も書いてみようか)
どんな気持ちで長々と説教垂れてくれたのか見てみたいものだ。
3度目の正直。とはまた違うが、ボールペンを手に取り、上司の名前と説教中の時間を書く。
少しばかり憎しみを込め、先程よりも濃いめの字がノートに書かれる。
字が浮かんできた。
「え?」
浮かんできた字を流し読んでいると、ある部分に目が止まる。
私の心に、先程とは違う波紋が広がった。
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