運命の本との出会

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しかし、この星の80%から90%が、農業をしている。雇われ農夫、又は専業農夫で高級食材を、造っているかのいずれかだ。 従って宮本の家も農家と勝手に思っていた。 以前、宮本に連れて来られた時は、あいつ任せだったので、どうやって行ったのか、まったく記憶に無かった。 俺は直ぐに何でも忘れてしまう、たちなのだ。特に人の名前など直ぐに忘れる。 毎日の様に呼ぶ者だけ憶えていれば、不便は無いのだから当然だ。 あっ、学校の校長の名前なんだっけ。 まあ、良いか、つまらぬ事だと、俺は宮本の家を目指した。 直ぐに見付かった。ちょっと歩けば、そこには家は一軒しかない。 途中農業トラックとすれ違ったので、やはりここも変わんねぇなぁ、と思いながら宮本の家を目指した。家の前に着くと、 「ヤー」とか、「オー」とか、声が聞こえた。 「おっ、やってるやってる」 俺は道場の声に、血が騒いだ。 「御免下さい」 呼び鈴を押しながら、大声で言った。 「どちら様でしょうか?」 インターホンから女の人の声で返事があった。 どうやらお袋さんの様だ、モニターカメラが付いているので、俺の顔は見えているのだろう。だが、この間はお袋さんには、会っていない、初対面だ。 「竹田ユカリと申します、宮本君・・・」 ありゃ、下の名前知らねぇと思いながら、 「宮本君、いらっしゃいますか」 と訊ねた。 「ああ、一慶の事ね、道場へ回って下さい」 と返事が来た。俺は道場は何処にあるのだろうと、キョロキョロすると、モニターで分かったのだろう。 「庭の方」 と言ったので、俺はカメラに向かって、右を指した。すると、 「そうそう、そっち」 と返事があった。俺は頭を下げると、石が地面に嵌め込まれた、ニホン庭園風の庭へと入っていった。 木々が格好良く植えてあり、まるで時代劇の庭の様だった。(あるんだなこんなの) 以前は家の中へ通されたので、庭など見ることは無かった。年寄りじゃあるまいし、庭自慢でもあるまい。 暫く歩くと庭に面して、戸が開け放たれた、外から丸見えの道場に着いた。
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