運命の本との出会

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「スゲェな爺っちゃん、達人?」 「まさか、ただのジジイさ。昔は知らんが、 やっぱり農夫だって聞いたけど」 「ふーん」 「ああ、爺っちゃんの爺っちゃんが、この辺りの星団軍にいたって聞いた。 嘘か本とか、その昔誰だかは、連邦の近衛兵団の一員だったって言ってたっけ。 まあ、帝国軍と戦っていた時は、誰でも連邦軍だけどな。ありゃ、近衛兵なんていないわな。 あはは、勘違い」 「まあな」 二人の間に沈黙が降りた。すると、弟が突然、 「試合を、お願いします!」 と俺の前に来て頭を下げた。俺は宮本の顔を、にやりと見て笑った。 どうぞ、と宮本は軽く頷いた。俺は、 「しょうがねぇなぁ~」 と立ち上がると、上着を脱いで、デニムのシャツとGパン姿になり、靴下を脱いだ。 「おいおい、一応道場だから」 と宮本は慌てて、道着の上下新品を持ってきてくれた。ごわごわだが、可動部分は柔らかい。俺は、ちょっと気合いが入って、蹴りと突きの練習を、2~3回やってみた。 うん大丈夫、やれそうだ。俺はそう思い、弟と道場の真ん中へ立って対峙した。 宮本が審判となって、 「始め!」 と号令を掛けた。 ルールは?えーい、この星の大会ルールで良いかと、俺は宮本弟の動きを見た。軽い牽制の蹴りが来た。おっ鋭い、俺は嬉しくなってきた。新宙拳の技のバリエーションは豊富だ。次から次へと、知らない技が出ていつも手こづっていた。 親父は只、うてうてケロケロと、お前はカエルか!と言いたくなる事しか言わない。 上下のコンビネーションが来た。俺は軽くいなし左手で上から下へと向かって、手刀を撃ち込んだ。慌てて弟は両手で受けた。 胸から下が、がら空き、一般的には蹴りのタイミングだが、膝を上げるか両手を下げて受けられるのが普通だ。 それに新宙拳の返し技のタイミングを造ってしまう。 俺はそのまま、左手で弟の頭を抑えたまま、一歩前進した。 予想外の動きに弟はぐらりと後方へ、倒れそうになり踏ん張った。そして、何が来るか分からないと思ったのか、パッと後方へと飛び退いた。
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