運命の本との出会

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何も次の手は無かったのだが、どうやらエリア選手相手に、ビビった様だ。宮本が、 「下がるな!攻撃しろ」 と弟にげきを飛ばした。 弟は焦った様に廻し蹴りを2回。そして足払いへと、コンビネーションの蹴りを猛烈にやって来た。俺は1回目は下がり、2回目は右へと少しだけ移動した。 足払いは全くの空振りになった。立ち上り高い飛び蹴り、着地と同時に右手の手刀を振り回して来た。 まったく良く動く、 「おい、竹ちゃん手加減しないで技出せよ。練習にならん!」 と宮本が俺に言った。 「オオッ」 と俺は軽く返事をすると、 「行くぞ!」 と猛烈に突進して突きを放った。 最初の1発2発は手でいなしていたが段々後退していった。 俺はまったく手を休まず、10発は放ったろうか。体を庇う、弟君の腕にガンガン撃ち込んだ。もう、手が痛くて防御するのも、限界に来たはずだと。俺はローキックを1発お見舞してやった。 ガキッ!と手応えのある感覚が、俺の足に来た。弟君は、もんどりうって倒れた。 「止め!」 と宮本が中に割って入った。 ハアハアと二人は息を切らし、足を引き摺る弟君と俺は、中央に戻り礼をした。 「いやー、凄い!あれは防げない」 弟君は傷めた足を投げ出して座り込み、俺に言った。 「大丈夫、本気でやっちゃったけど。 怪我してない?」 と俺が言うと、 「なーに、最近天狗になってたから 良い勉強さ」 と打身スプレーを弟の足に振りながら、宮本は言った。宮本はまるで可愛い息子を、いたわる親父の様な顔をして、弟の治療をしていた。 (ああ、そうか。俺、末っ子だから弟を可愛がるなんて、経験無いんだ。良いものだな) 俺も宮本の顔を見て少し嬉しくなっていた。 弟君は立ち上り俺に礼をして、道場を出ていった。もう、足は引き摺る程では、なくなっていた様だ。若い時は回復も早いものだ。 まだ俺も、若いのだが。 「いやー、見事な攻撃でしたな。 本当、突きと蹴りだけで、勝てんじゃないの お前さん」 「まあね、力任せさ」
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