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その時、出雲がやって来た。その表情は険しくなっていた。恵子が一葉に何か言っているのを耳にしたからだ。
「一葉さあ、行こうか」と一葉の肩を抱き連れて行こうとした。
恵子はそれを見て「ねえ、出雲、そんなお子ちゃまを相手しないで、私を相手してほしいなあ。私と一緒にホテルでワインでも飲もうよ」と言う。
出雲は怒った顔をして眼鏡の奥の瞳が恵子さんを睨んでいる。その顔を見て恵子の顔が暗くなる。
「そんな顔初めて見るわ。何でその子なん、私の方がええ女やのに。なんでやの」と悲しそうな顔と声を出して言う恵子さん。
出雲は大きなため息をつきながら「恵子さん、私には婚約者がいるんですよ。一葉がそうです。だから、いくら私を誘ってもあなたになびくことはないですよ。私には一葉だけが女なんです」と言い放つ。
それを聞いた。恵子は悔しくて唇をかみしめていた。
「さあ、一葉行くよ」と出雲は一葉を連れ出す。
残された恵子の瞳には一滴の涙が流れていた。恵子の出雲への思いも本物だったのだろう。
「一葉、大丈夫だった。彼女かなりきつい性格だから、何か言われたんじゃないかな。根は悪い人じゃないんだけどね」
「ううん大丈夫よ。でも、恵子さん本当に、龍一さんの事が好きやったんやね。でも私も好きやから、恵子さんに龍一さんを上げられへんかったわ」と言うと出雲を 真直ぐに見つめる一葉。
そんな一葉を見て出雲は、微笑みながら言う。
「ありがとう一葉。私も一葉は誰にもあげられへんなあ。一葉しか見えないよ」と言うと一葉を抱きしめ深いキスをする出雲。
「今夜ホテルとっているからゆっくりしていかないか」と一葉の耳元で囁く。
その言葉に頬は朱色に染まり、胸の高鳴りをおさえる事が出来ない一葉。
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