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恵子の言い方は、まるで出雲に抱かれたと言わんばかりの話ぶりだった。
その一言で一葉の心に針が刺さる。「愛人、出雲さんは愛人が欲しいの。私を好きなんじゃないの」と小さく呟く。
一葉は心の中に傷を負ってしまう。だが出雲の前ではそれを出さない。いつもと変わらない一葉を演じていた。
一葉はその事が思い出されてしまい心の傷がよみがえる。
恵子は出雲に自分の身体を摺り寄せながら、甘ったるい声で囁いている。
「ねえ、出雲さん。今夜私暇なの。出雲さんと一緒に過ごしたいな」出雲は、恵子に笑いながら答えている。
「あはは、また冗談を恵子さんは、私じゃないでしょう。早く彼氏の所に行かないと」
「出雲さんたら、つれないのね。私は一人よ。ずっと出雲さんをしたっているのに、いつになったら私を受け入れてくれるのかしら」と拗ねて見せる恵子。
その時、出雲が一葉に気付く。
「あ、一葉、今終わるから待っててや」と声をかけると出雲は片付けに中へと入っていく。
その言葉を聞いた恵子は振り返り、一葉をきっと睨み付ける様に見る。
そのささる視線を受けながら一葉は軽く会釈をする。
恵子は、つかつかと一葉の所に歩み寄り、にやりと笑いながら口を開く
「あら、あなた出雲さんの愛人さんね。お久しぶりね。まだ、出雲さんに付きまとっているの。いい加減離れてちょうだい。私の出雲さんなのに。本当にいい加減にしてほしいわ。出雲さんに遊ばれている事が解らないの」とイライラしながら言う。
一葉は、恵子の愛人と言う言葉にまた心が傷つきそうになる。
「私は、出雲さんと付き合っていますし。れっきとした彼女です。愛人じゃないです」と反論する。
それを聞いて恵子は高笑いをする。「もういい加減、あきらめなさい。あなたを見ていると本当にいらいらするのよね。出雲が抱かないのはあんたに魅力が無いからよ。ふん」と顔をそむける。
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