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確かに恵子さんが言ったように、一葉はまだ出雲に抱かれてはいない。
恵子さんは見抜いていたのだろう。
二人の一瞬のやり取りを見て、一葉が出雲に大事にされていることを。
出雲はタクシーを走らせて予約しておいたホテルへと向かった。
タクシーの中で出雲は何も話さない。
ただ黙って一葉の手を握り締めていた。
しかし心の中は激しく燃え始めていた。
一葉も黙ったまま出雲の手のぬくもりを感じていた。
いつも優しく一葉を思いやる出雲。
出雲だけを見つめている一葉。
いつも穏やかな時が流れている二人だった。
ホテルに着くと、優しくそっと手を取り、タクシーから降ろし出雲が一葉をエスコートする。
出雲はフロントで手続きを済ませると部屋の鍵を受け取る。
そしてボーイさんに案内されて23階の部屋へと行く。
部屋に入るとかなりの広さのある部屋に驚く一葉だった。
ベッドはダブルが一つだけ置かれており、ソファーにローテーブルもありくつろげるようになっていた。
そして、大きな窓からは大阪の夜景がとても綺麗に見えた。
それを見て一葉は、思わず「きれいね」と呟いていた。
出雲はそっと一葉の傍により、抱きしめる。
「一葉、本当に綺麗だね。喜んでもらえてうれしいよ。愛しているよ。一葉」一葉の白い肌が朱色に染まり始める。
「龍一さん。私も愛しています」
そう言うと一葉はくるりと身体の向きを変え出雲を見つめる。
見つめられて出雲の眼鏡の奥の瞳は潤い体中に熱を帯び始めるのを感じた。
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