遠距離ゆえに

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久々に仕事が早く終わり、更衣室で着替えていたら、たまたま一緒になった年上の男性ドクターに飲みに誘われた。 「今日は早いじゃん!これからデート?」 「いえ…」 「じゃ飲み行こ、駅前の店○?、先に行ってるからー。」 俺はドクターではないし、同じ院内で働いているとはいえ、業種が違うのに、やけに気に入られて、最近よく話しかけられて、こないだも飲みに誘われていた。 沖縄料理の渋い居酒屋、少し遅れて入ると、男女数人がドクターを囲んで座っていた。 「おつかれ!こっちこっち!」 「キャー!ホントにきたぁー!」 促されて空いてる席に座ると、ナースたちだと順番に名前を紹介された。 「君、イケメンだから、君とこれから一緒に飲むって言ったら彼女たちが一緒に飲みたがって来ちゃったよー。」 キャーキャーされるのは苦手だ。 このメンバーで飲むとわかっていたら、適当に理由つけて断って来ることはなかった。 仕事上なんの繋がりもないはずなのに、初対面のナースたちは、俺のことを知っている口ぶりで、 「マスク取ると顔がまた雰囲気違うー」 院内で見かけたことがあるようだ。 女子たちと一緒に飲むのは、何が起こることはなくとも、彼女が知ったら良い気がしないだろう。 でも、今回は、ドクターを立てる意味でも、苦笑いを抑えてとりあえず座ると、隣に座ったナースから、さっそく質問の嵐。 「彼女いるんですかー?」 「はい。」 「え~ショックー」 「彼女さんてどんな感じー?写メあるー?」 今度は別のナースから。 「んーどんなって…見せれる写メないんで…」 彼女を撮った写真はあっても、 彼女は、自分の写真をみるのが嫌いだった。可愛く撮れたら見せると、恥ずかしいから、見せないでと言われたことがある。 知らない人に見せるのはきっと嫌がるだろう。
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