「これ、借ります」

3/27
前へ
/27ページ
次へ
―――――――――――――――― 昼休みになり三十分が過ぎた頃 ―――――――――――――――― 「これ、借ります」 借り出しカウンターにやってきたのは、メガネに痩せ型の男性。 「図書カードをお願いします」 『LGBT社員への接し方~理解が求められる時代に~』 『LGBTとは?』 「僕じゃないですよ」 バーコードを読み取っていると、ふいにメガネくんが言った。 「同僚にいるんです」 顔を上げた私に、彼は暗そうに話す。 なんと答えて良いかわからない私が黙っていると、メガネくんは一礼してカウンターを去って行った。 ―――――――――――――――― 閉館直前の午後七時五分前 ―――――――――――――――― 「これ、借ります」 その綺麗な声に、私は思わず顔をあげた。 って、顔も綺麗!超美女!しかも小顔だ! 「図書カードをお願いします」 私が図書カードの名前を見ると、彼女はサエコという名らしい。 そんな彼女が借りる本は―― 『彼の心を掴む💕恋に効くレシピ』 『片想いが両想いになる❤恋占い✨』 ・・・。 ていうか、サエコ(勝手に呼び捨て)でも片思いなんだね。。 サエコなら、振る人なんて、いないと思うけど? なんて思いは口にせず、私はバーコードを読み取った。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加