「これ、借ります」

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――――――――――――――― 閉館直前の午後七時五分前 ――――――――――――――― 「これ、借ります」 その綺麗な声に、思わず顔をあげた。 って、サエコ! そういや、片思いらしいけど 「図書カードをお願いします」 今日の彼女がカウンターに置いたのは、2冊だった。私は1冊目のタイトルに目を向ける。 『彼との距離が縮まるメール文✉』 とりあえずメアドは交換している、と。 『恋愛指導書~カレの電話番号をGETできる~』 だがしかし電話番号は知らない、と。 もう、ここまで来れば告っちゃえば? サエコなら断る人いないよ。 っていうか、付き合ってるかどうかも知らないけど。。 そのときサエコがクスッと笑った気がした。 ・・・え? 私は「?」という表情で顔をあげると、彼女は腕組みをし「ここ、仮にも大企業のなかの図書館なのに。恋愛の本が多くて、いいわね」と言った。 なんと返して良いか分からず「・・・はぁ」と答えると 「あなたには関係なかったかしら。うふふ、ごめんなさいね」 と言って本を受け取り、去って行った。 ―――なんなんだ!! なんかヤな感じ! (勝手に)応援してたのに!!
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