プロローグ

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グランドをぐるりと囲んでいる金網を、がしゃんと鳴らす。 京介(きょうすけ)。 ……ちょっと前までは、あのグランドで僕たちの時間は確かに重なってたのに。 もうあんな楽しい時間は、二度と過ごせないんだね。 ジリジリと肌を焼く太陽。 そう言えば、去年は僕らみんな真っ黒だったね。 すっかり白く戻ってしまった腕を見下ろし、このまま、夏の太陽に焼かれて無くなってしまわないかな。 そんなバカな事を考えて苦笑する。 ここは思い出の場所。 野球部に入るって決めたのも、初めてツーショットで写真を撮ったのも、京介を好きだって気づいたのも。 そして……進路の事を聞いたのも…… 僕はフェンスに背中を預けて、そのままずるずるとしゃがみこんだ。 ずっと好きだったんだ。 伝えられないこの思いは、どうしたら消せるんだろう。
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