卒業式

3/8
前へ
/275ページ
次へ
「もう、泣かすなよ」 大貴(だいき)が京介に文句を言いながら抱きついてきて、頭をナデナデしてくれる。 ああ、大貴だ。 試合でミスした時、京介の事で落ち込んでいる時、テストの成績が良くなかった時、いつも大貴が慰めてくれたんだ。 こんなに救われていたのに何で気づかなかったんだろう。 大貴は明るく茶化しながらも、僕の気持ちに一番に気づいてくれていたのに。 「大貴と離れるの寂しいよ」 僕も大貴を抱き寄せる。 「俺も。真弘と離れたくないよ」 「大貴ー」 「真弘ー」 盛り上がっている僕たちを容赦なく引き剥がしたのは、やっぱり京介だった。 「はいはい。涙の別れは式の後にしてくれる? もうみんな廊下に並んでるから」 えっ…… 僕たちが出ていくと、他のクラスの人もみんな廊下に出ていた。 神妙な雰囲気にごくりと唾を飲み込む。 本当に最後なんだ。 気持ちを引き締めて、みんなの列に加わった。
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!

455人が本棚に入れています
本棚に追加