454人が本棚に入れています
本棚に追加
「卒業生、退場」
教頭の掛け声で、クラス毎に卒業生が退場していく。
体育館は大きな拍手に包まれた。
僕はしっかりと顔を上げて歩いていく。
3年間ありがとう。
心のなかで感謝の言葉をのべて、僕たちは無事に卒業式を終えた。
教室に入って最後のHRをして、僕たちの高校生活は終わった。
明日からはこの校舎に通うことはなくなる。
どんな生活が待っているのかまだ想像できないが、楽しみではある。
「写真撮ろうぜ」
誰かの声で写真大会が始まった。
国公立志望の人は本番が迫っているので、いつまでも浮かれているわけにはいかない。
けれど、進路が決まっている僕たち5人は、笑いながら教室や運動場で沢山写真を撮った。
先生や部活の後輩とも写真を撮って満足した僕は、みんなの輪からそっと抜け出してあの思い出の場所に来た。
京介とツーショット写真を撮ったのも、野球部入部を決めたのも、京介に東京に行くって告げられたのも、そして類に告白されたのもここなんだ。
カシャンとフェンスにもたれながらスマホを取り出して、さっき撮った沢山の写真を見ていく。
あっ……。
類が空を見上げているのがすごくかっこよくて、思わず撮った写真で手が止まった。
沢山の人に囲まれている類に声をかけることが出来なくて、偶然一人になった所を見かけて隠し撮りしたんだ。
一緒に写真、撮りたかったな。
最初のコメントを投稿しよう!