初恋

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試合の間、僕はボールを追いながらも、目の端にはいつも京介を映していたんだ。 最初はぶかぶかだったユニフォームも、筋肉がつき体が出来てくると、かっこよく決まるようになった。 ボールをホームに投げるときの腕や背中の筋肉の動きが綺麗で、じっと見入ってしまい、そんな自分に落ち込んだこともあった。 男相手にこんなにドキドキするなんておかしいんじゃないかって、悩んだ時期もあった。 でも僕は迷いながらも京介の背中を2年半ずっと見続けたんだ。 そして思う。 やっぱり僕は京介が好きなんだって。 背中だけを見続ける日々の中にもたまにご褒美がある。 外野に飛んで来たボールを取って、京介に投げる。 京介はランナーをアウトにすると、嬉しそうに笑いながら僕に手を振ってくれるんだ。 その時だけ背中じゃなく、京介の顔が見れた。 それもとびきり嬉しそうな顔が。 この笑顔は、僕にとってはとびきりのご褒美だった。 京介と過ごす時間は、宝物のように大切な時間で、「真弘(まひろ)」って呼ばれるだけで泣きたいくらい幸せだった。
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