心の中の靄(もや)

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「すぐ開けるね」 篭囲を迎えると彼は案の定「こんな素敵なワンピース買ったの?よく似合ってるよ」と褒めてくれた。 「すぐ着替えるから」 「どうして?別に着ててもいいよ」 「家で試しに着てみただけだから」 「そうなの?まあ好きにしたら」 「着替えるから向こうに行くけど先にハンガーとって来ようか?」 「くくちゃん、一緒にシャワー浴びない?」 「そういうのは遠慮しておこうかな。 ほら私、買い物の時の服にまた着替えるだけだから」 「今からシャワー浴びるなら別のに着替えればいいんじゃない?」 (強制する言い方じゃなくたって私に選ばせる気がないなら命令でしょ……察しが悪いんじゃなくてわざとなのかな) 「いいよ、じゃそうしよう」 声を出してから投げやりに聞こえただろうなと自覚した。 「嫌なの?」と訊かれて何と答えたらいいかわからない。
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