過去を漏らす

2/8
前へ
/675ページ
次へ
―――軽快な旋律を響かせクラッシック音楽が流れる中、小野 静也(おのしずや)は客席にコーヒーを運び それをテーブルへ置くと「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」と客へ訊ねた。 女性客は彼の顔を見て頬を染めて「はい」と答えた。 そのすぐ手前の席では店員である瑪瑙 閑(めのうかん)が若い女性客二人をナンパしていた。 閑の職務怠慢を目にした雪村紅箜(ゆきむらくく)はそばまで行くと 「失礼します。瑪瑙がご迷惑をおかけしてすいませんでした」と一礼し閑の腕をぐいとつかみ客席から引き離した。 このカフェは若い女性客が多い。 けれど立地場所は複雑な細い道を抜けた路地裏な上、店の内装も渋い純喫茶を意識したものだ。 ほとんどの女性たちの目的は明らかに顔よし、爽やかで身のこなしも美しい小野の接客だった。
/675ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加