誘ったはずが

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「……いいの?オレがくくちゃんを好きだからってそれだけで結婚望んで」 紅箜は可笑しくなり「不誠実に付き合ってみたり、さっさとベッドに誘ったり私の気持ちなんて考えもしなかったのにそれだけはためらうの?」と訊いてみた。 「あの頃と違って本気で好きなんだよ」 篭囲から見つめられて紅箜は困った人だなと思いつつ「好きなのに迷うの?」と訊いた。 「変だよな……でも」 篭囲は紅箜の顔をじっと見て「好きだからいろいろ考えすぎる」とつぶやいた。 「……いいよ、悩んで答え出るなら待つよ。 でも本気じゃないから迷ってるように感じちゃう」 「慎重なだけだって」 「……それなら答えを出す期限を作ったらいいじゃない?堂々巡りで待たされるのイヤ」 篭囲は(今うまい返事をしないと怒られるか失望されるかだろうな)と「答えなんてないのにな」と返した。 「悩んだところで算数じゃないんだから正しい答えはないね」 「だったらオレ、結婚とかって形じゃなくてくくちゃんを誰にも渡したくないんだなって」 「……つまりどういうこと?」 「規則をつくって無益な衝突を避けようとしても駄目になる時は管理の網の目、周囲の人の目かいくぐって本人の良心さえ最後の砦にならないなんて 結婚よりおれが君にとって離れたくない男でいることの方が大事かな」 「手錠やロープで体を拘束しても油断すれば逃げられるからあえて使わずに目を光らせておくってこと?」
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