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「おい雪村、お帰りになったテーブルの片付け」
そう調理担当に声をかけられ紅箜は思わずそっちをにらんだ。
相手は作業を続けていたが彼女のわずかな目線に気付き「いいじゃん、チャラい瑪瑙を一途に好きなんて」と返してきた。
店主も「あの客は希少な瑪瑙の追っかけだしな」と言った。
紅箜はカップを下げて「でも瑪瑙さんにいいようにあしらわれてます」と小さめの声で言った。
店主も調理担当も(それは雪村も過去にやられてただろうが)と思い何も返事をしなかった。
ーーーそれはまだ静也がこの店にいなかった頃
紅箜は閑の軟派な性格を知り、いろいろ話しかけていた。
店主から見れば女性客へうつつを抜かす閑の目線になんとか入ろうとする無駄な足掻きに見えたが
調理担当の男からすると兄貴分にかまってもらおうとする子分にしか見えなかった。
元々この調理担当の男は紅箜の容貌に興味がなかった。
だからこそ紅箜はこのカフェで働くことがあまり苦痛にならずに済んだ。
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