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紅箜は閑へ楽しげに声をかけるあの女性客の存在には早くから気づいていたが明らかに閑が相手にしていないのが見てとれ深く気にしなかった。
とはいえ女の紅箜から見て彼女は魅力的な容姿だった。
スタイルがよく、特に脚の形がきれいで顔も日本人離れしたほりの深い、真っ白な肌と鮮やかな口紅がハッとするほど目をひく。
紅箜が思うにあまりにも強い好意は閑には迷惑なようだった。
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店主は帰宅前の紅箜へ声をかけ「なぜ店を移りたいようなことを言った?」と問いかけた。
「……小野君、素直でいい人ですよね。
それに比べて瑪瑙さんって情に弱いって言うんでしょうか、どこか人に甘くて店を任されたらうまく逃げられないだろうな、と思ったんです。
お客さんが存在を認めてくれるから、とか」
「……なあ、雪村。
お前、やっぱり恋人にわざと誤解されるようなことばかりしてるだろ?」
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