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静也はTシャツから店での決まりになっている白シャツへ着替えている最中に閑がそばを通り、紅箜から惚れられていたという(信じがたい)発言を思い出した。
「瑪瑙さん」と声をかけるが閑は聞こえていないらしく素通りした。
身支度を整え再び閑に声をかけようとしたその時、紅箜が無表情で調理している姿が静也の目に入った。
「あれ、もう雪村さん来てたんですか?」
「うん、家で着替えてたから荷物置いて作業にはいったとこ」
静也は(本人いちゃ瑪瑙さんに話を訊けないな)と残念に感じながら紅箜に「昨日はどこでご飯にしたんですか?」と訊ねた。
「ガス◯」
「意外ですね、なんか彼氏さん、そういうとこ似合わない人なのに」
「私の格好がラフすぎるから素敵なお店へ入るの諦めてくれた。
わざとそういうワンピースを着ていったから作戦通りなんだけど」
静也は不思議に思い「作戦通りってどうしてそんなことを?」と訊ねた。
「好きじゃないの。夜景が綺麗とか、カップルに向けてわざと可愛い盛り付けしてあったりとか、寿司が回ってないとか」
「それでも美味しいお店を探せば見つかるんじゃないんです?」
「……そうかもね。でも彼とはそういうことだけじゃなくてお金が出ていく外食って嫌な気持ちなのよ」
そこまで答えてから紅箜は何を答えているんだか、と馬鹿馬鹿しくなった。
「雪村さんは彼氏さんのどこを好きなんです?」
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