プロローグ

5/9
979人が本棚に入れています
本棚に追加
/1393ページ
  『それも、説明されなくても分かっている』 「各仕入先には、無理を言って限界まで仕入れ値を下げさせました。こうなれば利益を考えると、価格を上げるしかありません」 『価格アップなど、認める訳にはいかない』  こうした会議は、日々どこででも企業で行われているもの。内容を聞く限り、決して珍しいものでは無い。重役らしき人物の、言動の汚さとてあり得ぬものでは無いと言い切れない。  日本経済のみならず、世界的にも景気の低迷が囁かれている昨今。  企業が生き残る為には、並々ならぬ努力が必要なのは当然の事。そうした状況下の為、大企業といえど安穏と構えてなどいられない。下手な手段を講じれば、根幹を揺るがす程の大打撃を受けかねない。  ただ、この重役らしき人物は、その下手な手段を要求しているようである。  しかも、その詳細は室内の面々の手元に書面化され。そこそこの厚みを持った、ファイルで届いていた。
/1393ページ

最初のコメントを投稿しよう!