雷鳴の中の恋

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教室から図書室まで、二人とも無言のまま歩く。 遠くから吹奏楽部の練習の音や、運動部の掛け声が聴こえてくるけど、まるでこの廊下だけが別世界になってしまったように思えた。 沈黙が気まずくて、何か話さなきゃと思えば思うほど、全く言葉が見つからない。 ハンカチをぎゅっと握りしめていると、不意に小泉くんが振り返った。 「ふ。ウチの吹奏楽部、下手だね」 「えっ、あ、うん・・・」 正直そこまでちゃんと吹奏楽部の演奏に耳を傾けていたわけではなかったから、曖昧な返事しか出来なかった。 それよりも、少しだけオレンジがかった陽射しの中で柔らかく微笑んだ小泉くんの笑顔があまりにも綺麗で、心臓が調子ハズレに弾んだ。
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