1通目 私と彼の残した手紙

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 ――達樹(タツキ)が、死んだ。  ザアザアと電話越しに絶え間なく注ぐ雨音と共に聞こえた声がそう言った時は、タチの悪い冗談だと思っていた。  ただ、冗談にしては声がやけに震えていたと、そう感じた。  私は半ば本当のこととは思えずに、言われるがままにタツキのお母さんが電話で言っていた病院へ向かった。  どこへ行けばいいかわからなかったので病院の受付でタツキの名前を言うと、看護師さんの表情が一気に暗くなった。  そして私は、白い部屋の白いベッドの上に横たわる、青白く冷たいタツキに再会した。  タツキの顔には、白い布が掛けられていた。  まるで自分がドラマのワンシーンに紛れ込んでしまったかのようだった。こんな光景なんてドラマの中でしか見たことがない、と頭の中で思っていた。そして、それほど私は自分のことを客観的に捉えていた。  こんな状況の中で、これはタツキがいつものように私を楽しませるために仕掛けた、趣味の悪いちょっと行き過ぎたドッキリなのかもしれないと、心のどこかで願ってしまっている自分がいた。 「美優(ミユ)ちゃん……」  呆然とタツキを見ている私に、タツキのお父さんとお母さんは寄り添った。  私は、これがタツキが好きだったドッキリでもサプライズでもないことを、確信してしまった。
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