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「起きて……起きて、タツキ」
「ん……もうちょっと」
一緒に横になりながら私が声を掛けるとタツキは決まって寝ぼけながら私を抱き寄せて、眠たそうなまぶたを一瞬だけ開いて私の唇にキスを落とした。
またすぐに寝てしまうのだけれど、そのキスが愛おしくて、私は毎日タツキを起こすのが楽しみでもあった。
「仕事、行かなきゃでしょ?」
「んー、行く。行くけどもう少し……」
「だーめ」
私が自分の身体を起こそうとすると、腰にぎゅっと抱きついて、眠そうな目で私を見上げた。
永遠にこのまま二人でベッドの上にいたい――。
そう思ってしまうほど、タツキのまなざしが愛おしかったけれど、仕事があるんだからと自分に言い聞かせて、心を鬼にしてタツキの足の裏に手を伸ばしてくすぐる。
「や、やめ!ちょ……!」
これが一番効くことを、タツキと長い時間を共有してきた私は知っていた。
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