6通目 二人の部屋の写真立ての後ろ

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 そこまで壊滅的に下手なわけではない。少し大ざっぱなだけなんだ。タツキは、いつもは靴下だって穴が空いているものも平気で履くくせに、料理の時になるとずっとなぜか几帳面になって、きっちりやらないと気が済まなくなるスイッチが入る。  そういう一面もあるのに、洗濯や掃除は好きじゃないんだから、少しは料理の時のきちんとした性格を他のものにも応用して欲しい、と思ったりしてしまう。 「じゃあミユは卵混ぜて」  いつもタツキが決めた料理を作るときは、こういった簡単なパートしか任せてもらえない。だから、ひそかに料理教室に通おうと思ったりしている。 「はーい」  ちょっと不満げに返事をしたけれど、タツキはそんなこと気にせずに、フライパンの中身に味付けをしていた。
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