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前日の雨でほとんどの桜が散ってしまった高校の入学式。
「桜が咲き乱れてない入学式なんて入学式じゃないよね、優梨奈。」
私は高校で唯一の中学校からの同級生、優梨奈に嘆いた。
「仕方ないでしょう?でも、桜が道に敷き詰められていて、桜の絨毯みたいじゃない?」
なんとなく優梨奈が楽しそうに言った。
「そうかもだけど…。やっぱり桜は咲いてて欲しかったな…。」
「未智ってそんなに桜が好きだったっけ?」
別に桜が好きな訳ではない。ただ、本当になんとなく桜が咲いていないのが嫌だっただけだ。
「そんなことはないけど…。なんとなく、かな?」
「ふふっ。何それ、やっぱり未智っておもしろいね。」
そんな会話をして、気が付けば高校の校門の前まで来ていた。
「今日から私たち高校生なんだね。」
優梨奈の不安混じりの声が遠くから聞こえてくる気がする。
「なんだか、入るのが怖いね…。」
散った桜が敷き詰められた校舎まで続く道を見ているとなんだか別世界な気がして、私たちはお互いに校門の前で立ち止まった。
「そこ、ごめんね。通してもらえる?」
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