第1章

4/16
前へ
/16ページ
次へ
 だから、私が残りのホスト費用を請求し たとしても、たぶんお金はないと思う。  だったら、お金の話をしても気分が悪く なるだけで、どうせお金は戻ってこないん だから、諦めるほうがよっぽどいい。    なんとかあさひにも理解してもらいたい んだけど。  図書館で勉強していると、時間はあっと いう間に過ぎる。  気が付くと午前0時を回っていて、図書館 は閉館。    あさひはいつもの様に、図書館に文句を 言い、アパートに帰る間に今日あった出来事 を饒舌におしゃべりする。  私は、この時間が好き。 普段はほとんど自分からしゃべらないあさひ が、この図書館から帰る時だけ、限りなく クリアーな富士山の湧き水が止めどなく 流れ出るように、私が口を挟む余地なく、 今日あった出来事を話している。  知り合う前は、無愛想で、ろくに喋らず、 ただただ感じ悪い人だったあさひが、一緒 にいる時間が増えて、内面をよく見られる 様になってから、じつはまったく反対の 性格だってわかるようになった。  本当は、おしゃべりで、しかも世話焼き。 困ってる人は出来る限り助けたい、そんな 人。  じゃあなんで、普段は無愛想かって言う と、そんな困っている人すべてを助けるこ とができないってことを、知ってるから、 だったら、始めから関わらない。  それに、1から10まで世話してしまうと、 その人本人が努力しなくなってしまうから、 だって。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加