5人が本棚に入れています
本棚に追加
「さっきから様子がおかしいけどなんかした?」
「……いや、何でもないよ」
彼はそっかと言って、ビールを飲み干し、缶を潰した。
ひしゃげた缶を見つめながら、彼はポツリと呟く。
「俺は何になれるだろうか」
独り言なのか、私に投げかけた言葉なのか分からない。が、私もその気持ちはよく理解できる。
就活は、今までとは違う誰かにならないといけない。社会に認められる誰かなのか、企業に認められる誰かなのか。私たちは社会の歯車の一部となって、動かなくてはならないのだ。
でも、その一部にもなれず、はじき出され続けている私は一体何者になれるのだろうかと、考え込んでしまう。
就活は、ゴールが決められていないマラソンを走るようなものだと、キャリアセンターの職員が言っていた。いくら走っても、ゴールは見えない。今になって、その意味がようやく分かった気がする。
「俺さ、就活とかおかしいと思うんだよね。だって、頑張っている奴が評価されないで、適当な奴らが評価されちゃんだよ? なんかニートになる人の気持ちが分かるわ」
「だから、やめたくなったんだ」
「そういうこと。理不尽なんだよ世の中」
呆れたように彼は言う。
彼がプライド高い部類の人間だと知ったのは最近のことだった。
最初のコメントを投稿しよう!