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◇◇◇
母の葬儀が終わり、四十九日が開けた十一月の月曜日。私は、娘の手を引いて広ヶ碕交差点に立った。通学団の団長には、娘の果乃がここで合流すると知らせてあった。
パリッと糊のきいた新しい制服は、私が学童擁護員となった証だ。どれだけ重い仕事なのか、そしてどれだけ辛い仕事なのか、母の姿をずっと見てきて分かっている。でも、私は進んでその仕事に就こうと決心した。
「あれ? お姉さんがこれからやるの?」
通学団長の良太が、笑顔で訊いてくる。
「そうよ。よろしくね!」と答えると、良太は「はい!」と言って敬礼の真似をした。
子供たちを渡し終え、しばらくして横断歩道を戻ると、小さな地蔵の前に立った。地蔵にはコンクリートでできた頑丈な囲い屋根が付いている。そして私は思った。
…… 私は、この囲い屋根になったのだ ……
私は目を瞑り、手を合わせた。
秋の日差しは、緩やかに進む木々の変化を透かしこんでいる。空は果てしなく高く澄んでいて、そのもっと向こう側に、母と兄の姿が見えるような気がした。
了
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