フラジャイル

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電車の席は窓側だったので、流れる風景をぼんやりと眺める事になった。長閑な田園風景から住宅が多くなり、次第に高層ビル群に変わっていった。車内は旅行帰りの人が多いようで、皆ほっとした表情をしているように見えた。 一方、私は横浜に近付くにつれ、段々と憂鬱になって来た。様々な記憶の断片。フラッシュバックに襲われる。イギリスに行った本当の理由は、こういう事から逃れる為だった。人間関係をリセットしたかった訳ではない。ただ思い出したくないだけだ。私は日本でちゃんと生活する事が出来るだろうか。旅行気分に浸っていたのは、もしかしたら現実逃避だったのかも知れない。 でも、そんな事ばかり言っていられない。ようやく日本の大学に行く事に決めたのだ。私はそろそろ一歩踏み出さなけばならない。そして、新たに知らない人たちと関わっていくのだろう。とにかく、迷惑を掛けっぱなしの家族が待つ家に帰る。まずはそれからだ。
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