魔女

10/10
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ
強い衝撃を受けながらも、二人とも反射的に逃げた。 捕まったら、きっと岩男に撲殺されて、丁度いい大きさに切断されて、あの大きな鍋で煮込まれてしまうんだ。そして魔女と岩男のディナーになる。そんな根拠のない恐怖を妄想する。走りながら振り返ると、魔女も岩男も追いかけて来てはいない。 「煮込んでたの何だろ?」 自分でも何でそんな意味の無いことを言ったのか分からない。 「知るか!戻って確かめてみれば?」 「嫌だ!無理!」 いいかげん息が切れてきた。 「お腹空いたんじゃないの?」 「疲れた!帰ってすぐ寝たい」 「帰れたらね!エレベーターは?無くなってない?」 無くなっていたら元の世界に戻れなくなってしまう。この場所は普通じゃない。何が起きてもおかしくない。橋を渡るとドアが見えた。 「あった!」 私達はドアの方へ全力で走った。エレベーターの中に駆け込むと、慌ててボタンを連打した。自分で言うのも何だが、私達がこんなに取り乱すのはそうない事だ。
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!