ウエルカム ホーム

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お盆なので、私は横浜の実家に帰ることにした。多摩センターから小田急線で大和まで行き、相鉄線に乗り換えて8駅。改めて実家から大学には通えない距離ではないと感じる。私は横浜に居たくないから大学の近くに住んでいる。 大学は8月13日から15日までは完全に休みで、構内に立ち入ることが出来ない。私は部室や図書館から追い出された格好だ。私の都合に合わせると大学の職員が休みを取れなくなってしまうので、それには文句は言わない。 電車の窓の外の真夏の景色は静かに流れて行く。外に出れば間違いなく茹だるように暑いのだが、電車の中は別世界のようにエアコンが効いていて私からすれば寒いくらいだ。 高校生の女の子が三人乗ってきた。ラクロス部。学校の名前が付いたスポーツバッグとスティックが入ったケースを担いでいる。健康的に日焼けして目はキラキラと輝いている。私は高校の時は部活をやっていなかったので、なんだか羨ましく思う。 最近、私の身の周りでは本当に変な事ばかり起きる。昨夜の「魔女の箱庭」の件は、私の中でもまだ整理がついていない。あれは一体何だったのか。最上階に本当にあれがあるのか。または私達は異世界に飛ばされたのか。自分の住んでいるマンションにあんなものがあるなんて誰が想像できる?あまりにも現実離れした話なので、レイカも私も他人に話す事はないだろう。そんな事があった割には、夜はぐっすりと眠れた気がする。疲れていたのか。 お盆に託けて久しぶりに家に帰るのだけれど、私の家はプロテスタントなので実はお盆なんて関係ない。父は無宗教だったのだが、結婚する前に母の強い勧めで洗礼を受けたらしい。なので父方の祖父母はクリスチャンではない。私も小さい頃は母に連れられて上星川にある教会に通っていた。帰りに駅前の相鉄ローゼンでお菓子を買って貰うのが楽しみだったのを憶えている。しかし、中学に入った頃には全く行かなくなった。母から次第に心が離れていったのが原因だ。イギリスに行ってからは思い出したように教会に通った。ホームステイ先もカトリックではなくプロテスタントの家をちゃんと選んだのだった。
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