ウエルカム ホーム

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父はプラモデルを自慢する子供のように微笑んだ。父は元々エンジニアで手先が器用だ。足の角度とか尻尾の長さが絶妙だ。 「じいさんばあさんのお寺は日蓮宗だからな。送り迎えしてあげなきゃ」 「こういうのっていいね。一見滑稽に見えるけど、ご先祖を思い遣る気持ちが自然と湧いてくるようになってるのね」 「そうだな。こういう風習って日本人の感性に合っているんだよなあ」 父は機械メーカーの役員で、それなりの地位にあるのだが、家ではそんな素振りは微塵も見せない。会社でも偉ぶったりしないので、きっと大勢の人に慕われているんだろう。 「おっと、怪しまれるからそろそろ戻るよ」 父はそう言って階段を下りて行った。私を慰めるために部屋に来たのだろうが、直接的にはそういう事を言わなかった。私が家族の中で一番話せるのが父だ。私が一番辛かった時には、すぐさまイギリスに連れて行ってくれた。わざわざ会社を休んで。私がこの部屋で半ば発狂しているのを見て、どうすれば良いか考えすぐに手配してくれたのだ。 母も母なりに私の事を心配してくれているのは分る。ただ、胸襟を開いて話す事は出来ない。自分の言いたい事だけを言って私の話を聞かないので、まともな会話にならないのだ。しかし母の厳しさがなければ、私はただの甘ったれた人間になっていたかもしれない。 私はベッドに横たわった。エアコンが効いてきて、丁度よい涼しさになってきた。こんな風に天井板の模様を眺めていると、高校時代に戻ったような感じがする。段々と眠くなってきた。 「リナ」 「おばあちゃん?!」 「そうよ」 私はベッドに仰向けに寝ているはずだったが、私は今、見た事もない場所にいて、目の前に父方の祖母が立っている。この場所は全体的に明るく白っぽい。祖母は綺麗な着物を纏っている。幽霊が出たのかもしれない。でも足はある。 「これは夢?」 「夢じゃないわ。お盆だから帰って来たのよ」 「本当に帰って来るんだ!キュウリに乗って来たの?」 「そう。お父さんが作ってくれた馬に乗って」
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