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祖母は6年前に亡くなった。祖母は私に優しかった。何でも買ってくれたし、叱られた覚えはない。躾の厳しい母は、そんな祖母に不満を持っているみたいだった。祖父は早くに亡くなったので私の記憶にはない。
「お母さんとうまくいっていないようね」
「母さんは、あたしが言う通りにしないからイライラしてるんだ」
「お母さんはあなたのことが嫌いなわけではないのよ。それは分っているわね」
「分ってる。心配してるからうるさく言うの。父さんも兄さんもそう。結局、あたしは家族みんなに甘えてるんだと思う」
「親兄弟とはそれを許してくれるものなのよ」
「あたし、父さんや兄さんみたいに立派な人になれそうにないわ」
「もともと人間に優劣なんてない。その人の立場よりも、善い行いをしているか、悪い行いをしていないかのほうが大切よ」
「ごめんなさい。そう言えばずっとお墓参りしてなかった」
「いいのよ。お墓参りは先祖供養ではないからね」
「そうなの?」
「お墓には私達は居ないの。ただ骨が埋まっているだけ。だって、みんな生まれ変わって別の世界で生きているのだから」
「そうか。じゃあ何のためにお墓参りをするの?」
「亡くなった人のことを思い出して、自分の死について考えて、今の自分を見つめ直すためにするのよ」
「知らなかった。最近死体に二回も遭遇したから、死について考えさせられたけど。そうだ、最近あたしの身の回りで変な事が起こるの。何でだろ?」
「それはあなたが変な事が起きて欲しいと思っているからよ。そして、誰かがあなたの願いを叶えてるの」
「誰かって、誰が?」
「あなたが想像している人ではないわ。会ったことがない人ね」
私が想像したのは彼だ。でも違うようだ。
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