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「死んだ後ってどうなるの?」
「命は永遠なの。だから今の世で死んでも、次の世に生まれ変わる。それがずっと続く」
「輪廻」
「そう。天上界から地獄界まで六つのランクの世界がある。あなたが今いる人間界もその中のひとつ。現世での行いによってそのいずれかの世界に生まれ変わる」
それは仏教の世界観だ。教会では、死後救われるのはイエスを救世主と信じた人だけで、信じない人は地獄で永遠に苦しみを受けると教えられた。天国に行ったら最後の審判で肉体が復活するらしい。
「天国か地獄の二択じゃないのね」
「天上界というのが天国と呼ばれる所。でも天上界で行いが悪いと地獄界に落ちることもあるのよ。六つの世界は迷い苦しむ世界で寿命もある。六道輪廻の根本原因を断ち切れさえすれば、簡単に極楽浄土という苦しみのない世界に行くことが出来る。六道とは違って寿命は無限よ。私はそこにいるの」
「天国より上なんだ」
「そうよ。あなたのお母さんは怒りの感情が強いから、このままだと修羅界に堕ちてしまう」
「ヤバイね。よく言っておくよ」
「あなたの彼は変わった所にいるのね。機械界?」
祖母には何でもお見通しのようだ。
「知ってるの?」
「あなたの苦しみの原因は、大好きな彼が亡くなったことね。彼が若くして急に死んでしまったから、あなたは心に大きな傷を受けた」
「うん」
「あなたはずっと彼と楽しく過ごしたかったのに、それを奪った運命を恨んでいる」
私の今の状態を、こんなに的確に言われたのは初めてだ。
「苦しまないようにするにはどうしたらいいの?」
「苦しみを無くすには、苦しみを直視しなければならない。すべてのものには終わりがある。出会いの数だけ別れがあり、楽しみの数だけ苦しみがある。遅かれ早かれ、彼は死んだし、あなたも必ず死を迎える時が来るのよ」
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