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「死ぬのって怖いな」
「死というものを恐れないで。今の身体が滅んでも、命は永遠だから、かならず次の世に生まれ変わる。あなたという命が無くなることはないの」
中学時代が終わったら高校時代になるようなものか。でもやっぱり、今の人生が終わってしまうのは怖い気がする。
「じゃあ、人は何のために生きているの?」
「幸福になるためよ。ありがちな言葉に聞こえるかもしれないけれど」
「何が幸せなのか、あたしには分らない」
「幸せとは不安が無いこと。どんなにお金持ちでも、どんなに美人でも、それだけでは幸せにはなれない。老いて死ぬという不安からは誰も逃れられないから。時間は掛かるかも知れないけれど、あなたは彼の死とあなた自身の死を見つめて受け入れなければならない。それが出来た時、あなたは幸せになることが出来る」
彼の死を受け入れる。それにはまず、彼が生きているのか、死んでいるのかをはっきりさせなくてはならない。
「彼に会うことはできる?」
「あなたが望めば、きっと会えるわ」
彼に会うとは、彼が入っているコンピューターの前に行くということなのだろうか。それとも来世で会うということだろうか。私は彼に会うのが怖い。身体を失った彼に会ったとしても、私はどうすれば良いか分からない。声しか聞くことの出来ない、永遠の遠距離恋愛だ。結局、彼も悲しい思いをして、私も悲しい思いをして絶望するだけだったら救いがない。
気がついたら祖母は居なくなっていて、私はベッドの上で涙が止まらないでいた。
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