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彼の声が聞こえるようになる。
「リナ、今日で会うのは最後だ」
「えっ?」
「君が会いに来てくれたら、終わりにしようと決めてたんだ」
「終わりって」
「君と会えたって、こんな状態じゃ何も出来ない。君を幸せにすることなんて、僕には絶対に出来ない。お互いに悲しくなるだけだ。行き着く先は、絶望だよ」
「そんなことない!勝手に決めないでよ!」
「僕には君の人生を奪うことなんて出来ない。恋愛して、結婚して、幸せに暮らしてください」
「ふざけないで!あたしはあなたじゃなきゃダメなの!ねえ、分ってるでしょ!」
「会いに来てくれて、ありがとう。嬉しかったよ。さようなら」
「待って!ウソでしょ・・・」
コンピューターのインジケーターが消えた。訪れる静寂。
これは私の妄想。
無理だ。バカみたい。結局、私には彼に会う勇気なんてない。今まで怖くて怖くて出来なかったことが、急に出来る訳がない。
遂に本格的に雨が降ってきた。かなり強い雨だ。遠くで雷も鳴っている。私は傘なんか持ってない。交番を後にする。駅に向かって坂を下る。私は何をしに来たんだろう。どんどん降れ。私をずぶ濡れにすればいい。このどうしようもない、哀れな私を。どんどん降れ。私の涙の代わりに。
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