第4章 花火

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[廿参] 「でも花火も綺麗だったんですけど、不思議なものも見ました」 と宏美は僕たちが見たオヤジとオフクロの高校生に見えた件を話した。 話そうかどうかは迷ったが隠すような事でもないし、話したところで戯言で済むような内容だったので僕は仁美さんにさっき見たままを話した。 仁美さんは面白そうに聞いていた。 「まあ、今でも高校時代と同じにしか見えないけどね。でもユノがそんなに幸せそうな顔をしていたのなら本当にその当時の2人を見ていたのかもねえ……」 「そうなんですか?」 僕は思わず聞いた。 「まぁ、あの2人に限らず、安ちゃんも鈴も昔から見て来ているからね。今でもその当時と同じようにしか見えへんのやけどね。 でもその当時にしか見えない顔というか雰囲気っていうのもあるのよね。もう忘れてしまっているのがほとんどなんだけど……この歳になってたまにそれを気が付く事があるわ。『あ、雪乃はこんな顔で笑っていたな』とか思う事あるわ。それは私にもあるみたいだけど」 そう言って仁美さんはハイネケンを飲んだ。 やはり飲みっぷりがカッコいいいと思ってしまう。ちょっと見惚れてしまった。 「でも、宏美ちゃんが言うように本当に幸せそうな顔をした高校生のユノが見えたのなら、花火を見ながらユノは本当に昔のように幸せだったんだろうなあ……私も見たかったなぁ。あぁ残念」 と本当に残念そうに仁美さんは言った。仁美さんはオフクロは昔から親友だったんだろう。
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