第4章 花火

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[廿四] 「離婚したのに幸せ?」 と僕が聞くと 「そうだよ。離婚しても」 「子供には大人の考える事は分からん」 僕が言うと 「実は私も分からん。なんせ結婚した事ないし……」 と仁美さんは何故か悪戯をした女子高生みたいな顔をして言った。そして笑った。 一瞬、地雷を踏んだかと自分の浅はかさを後悔したが、仁美さんは聞き流してくれた。 しかし、僕と仁美はどう対応して良いか分からずに、ひきつった愛想笑いしかできなかった。 店の中にはEaglesのHotel Californiaが流れていた。 天井の古い民家から持ってきた梁に煙草の煙と、Don Henleyの声が絡みついているようだ。 「こら仁美。うちの星の王子様を口説いたらあかんぞぉ」 とそこへオフクロという名の酔っ払いがやってきて仁美さんの横に座った。 「なんでぇ?良いやん」 仁美さんも負けずに酔っている。 「あかんわ。欲しかったら先に一平を持っていけ!」 オヤジはもう既にオフクロの持ち物でもなんでもない。 「要らんわ。あんたのお下がりなんか。中古品には興味がない」 オヤジが聞いたら泣くかもしれんな。
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