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[廿伍]
僕と宏美は「凄い会話をしているな」と顔を見合わせた。
どう対応して良いか更に分からん。顔が引きつるとはこういう事なんだろう。
大人になったらこんな話題は普通なんだろうか?
ある意味大人の凄さというかおばはんの凄さを感じた。
少なくとも息子の前で、いや息子と息子の同級生の女の子の前でされる会話なんだろうか?
「しゃあないな。宏美ちゃんが許したらあげるわ」
オフクロは唐突に話題を振ってきた。
「え?」
僕と宏美は2人で固まった。さっきから何回フリーズしただろうか?
仁美さんが宏美の顔を見た。
なぜ彼女に?という疑問符が仁美さんの顔に書いてあったが、それはすぐに消えて笑顔に変わって宏美を見ていた。
僕は恐る恐る宏美を横目で見た。
しかし宏美はニコッと笑って、
「あげません」
と言い切った。
その顔を見て僕はドキッとした。
人の心は一瞬で盗まれるものだと、初めて知った。
この笑顔が毎日見られるなら、何でもできるとさえ思った……が僕の顔は固まったままだけど。
そして、宏美の横顔は凛々しくて清々しかった。
仁美さんは一瞬驚いたような顔をしたが
「しゃあないなぁ。その顔で言われたら勝てません」
と素直に笑いながら引き下がった。当たり前だけど。
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