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[廿六]
オフクロは
「残念やったね。仁美」
と笑いながらグラスの焼酎を飲んだが、直ぐに僕に
「なに、にやけてんねん。この色男が……」
と座った眼のまま口元だけが引きつりながら笑っていた。
多分、宏美の返事を一番驚いていたのはオフクロかもしれない。
「高校時代のあんたと同じやな」
と仁美さんはオフクロに言った。
オフクロは振り向いて
「ちゃうわ」
と否定したが仁美さんは笑って僕に言った。
「良いモノを見れたわ。大事にしなさいよ」
「ほれ、息子を彼女に取られた雪乃ちゃん。飲みなさい。あんたの息子のIndependence Dayなんだから」
とオフクロの肩をポンポンと軽く叩いていた。
オフクロは自分の放った一言で撃沈した様だ。
僕は宏美の顔を見た。
宏美は俯うつむいていたが、僕が見ているのに気が付いて振り向いた。
この場合。何て言えば良いんだろう……。
「ごめんね。勝手にあげないって言ってしまって」
宏美は笑ってそう言った。
「ううん。どうぞって言われなくて良かったよ」
とっても嬉しかった。でもこれが精一杯の返事だった。
これって立場が逆じゃないか?と思ってしまった。
男のくせに僕は情けない……とまで思った。
しかし言葉がでない。何を言っていいのか分からない。
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