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[弐]
大人ってなかなか難しい生き物の様だ。でも、オヤジの脛をかじるのは新鮮な感覚を覚える。
夏休みの僕は、ここに来る前にコンビニで買った週刊誌をこの店で読んで、読み終わったらこの店に寄付するという行動パターンになっている。
僕が読んだあとは安藤さんが読んで、その後はオヤジか冴子のお父さんが読むんだろうな。
先週は冴子のお父さんが読んでいた。一応、大会社の社長らしいのだが……。
カウベルが鳴った。扉が開いてお客さんが来たようだ。
「いらしゃいませ」
安藤さんの声が固い……どうやら珍しく一見客らしい。
僕は振り向かずに週刊誌を読んでいた。
その客はカウンターの前まで来ると
「ご無沙汰してます。大迫です。この前はうちの嫁がお世話になったみたいで……」
と安藤さんに挨拶をした。
その声で僕も頭を上げて今入ってきた客をちらっと見た。
体格のガッチリとした男の人で上着とネクタイはしていないが、この店には仕事中に寄ったという感じがした。
一瞬「何のこっちゃ?」と言う顔をした安藤さんだったが直ぐに思い出したようで
「ああ、愛ちゃんの旦那の大迫君かぁ?」
と大きな声で応えた。
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