第5章 部下

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[弐] 大人ってなかなか難しい生き物の様だ。でも、オヤジの脛をかじるのは新鮮な感覚を覚える。 夏休みの僕は、ここに来る前にコンビニで買った週刊誌をこの店で読んで、読み終わったらこの店に寄付するという行動パターンになっている。 僕が読んだあとは安藤さんが読んで、その後はオヤジか冴子のお父さんが読むんだろうな。 先週は冴子のお父さんが読んでいた。一応、大会社の社長らしいのだが……。 カウベルが鳴った。扉が開いてお客さんが来たようだ。 「いらしゃいませ」 安藤さんの声が固い……どうやら珍しく一見客らしい。 僕は振り向かずに週刊誌を読んでいた。 その客はカウンターの前まで来ると 「ご無沙汰してます。大迫です。この前はうちの嫁がお世話になったみたいで……」 と安藤さんに挨拶をした。 その声で僕も頭を上げて今入ってきた客をちらっと見た。 体格のガッチリとした男の人で上着とネクタイはしていないが、この店には仕事中に寄ったという感じがした。 一瞬「何のこっちゃ?」と言う顔をした安藤さんだったが直ぐに思い出したようで 「ああ、愛ちゃんの旦那の大迫君かぁ?」 と大きな声で応えた。
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