第5章 部下

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[参] 「はい。そうです。ご無沙汰してます。この前、『ここに寄った』って嫁に聞いたんで僕も顔を出してみようと思ったんですが……うちの大将、いませんかぁ?」 「今、出てるなぁ。珍しく仕事しているかなら」 「そうなんですか……。でも取りあえずアイス珈琲下さい」 そういうと大迫と名乗ったその男の人は僕の席から一つ空けてカウンターに座った。 ――そうかぁ、この前、宏美と冴子と3人で居た時に来た美しい人の旦那がこの人かぁ―― あの美しい人の旦那さんならどんなに男前かと思っていたら、オヤジと変わらない歳位のオッサンだった。でも腕力はありそうだった。 オヤジの事を『うちの大将』って呼ぶんだこの人は……ちょっと新鮮だった。 安藤さんはカウンターにお冷とおしぼりを置きながら大迫さんに言った。 「もうすぐ帰ってくると思うけどねぇ」 「そうなんですか。それなら少し待ちます」 「うん。ゆっくりしてって……」 「あ、はい」 「ところでね、大迫君の横に座っているのはその大将の息子なんだけど」 と安藤さんが僕を大迫さんに紹介した。 「え?」 そういうと大迫さんは僕の方に振り向いて、しばらくじっと見ていたかと思うと 「へぇ、そうかぁ。藤崎さんの息子さんかぁ。お父さんにはお世話になってます」 と驚いたように話しかけてきた。
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