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[六]
「え?そんなんで、オヤジは営業出来ていたんですか?」
「うん。それで全社1番。絶対額では誰にも負けていなかった。それもダントツで……。」
「え~。信じられない。」
「それがどうやら本当らしいんや。」
と安藤さんが横から口を挟んだ。
「そう、腹が立つぐらい仕事が出来ていた。所長や上司が最後の最後で数字を頼むのは藤崎さんだった。
営業所で一番売っているのに、更に『あと100万売れ』って言われて、電話一本で決められるのは藤崎さんだけだった。」
「残業もほとんどしなかったな。7時になったら『飲みに行くぞ』って言いだすからメンバーはそれまでに仕事を終わってなくちゃならなかった。そこで『まだ仕事が……』なんて言おうもんならしばかれたな。それからしばらくは飲みにも連れて行ってくれなるし。」
「それは酷いですねえ……」
わが父ながら若い頃は酷い男だったようだ。
「でもね。藤崎さんのチームは誰も数字を外さないので有名やった。」
「え?」
「昼間からマンガ喫茶に居て、夜は7時以降は仕事もせずに飲みに行っているような男のチームが全社で一番売れていた。それも何年も、面子が代わっても、誰が異動で来ても出て行っても数字は外さない。売り上げはいつも一番。自称世界最強の営業チーム」
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